今年1月、作家の半藤一利氏が亡くなった。「歴史探偵」を自称し、研究者とは異なる視点で、文献と文献の間に落ち込んだ昭和史の真実を探し求め、それをわれわれに示してくれた。享年90歳。彼の追悼番組を見ていたら、「日本人が正気でなくなったんだ」という言葉が印象に残った。

日本が太平洋戦争を引き起こしたのは「軍部の暴走」と片付けてしまいがちだ。だが、マスコミが率先して戦意をあおっており、何より国民が「戦争を求める」空気に同調していったと鋭く批判したのが半藤氏だった。そしていったん戦争になれば、残酷な行為に対する「感覚のマヒ」が起こるとも指摘していた。だからこそ「正気を保つ」ことの重要性を強調しているように思えた。

「昭和史は高校の日本史では教えられることがない歴史」といわれている。今を生きるわれわれにとっていちばん知るべき歴史を学校教育で学べないことを嘆くべきか、それとも半藤氏の著書で学べることを喜ぶべきか。