「普通の現場」化に懸念 慣れが緩み生み、危機招く ノンフィクションライター 稲泉 連氏に聞く

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いないずみ・れん 1979年生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。2005年に『ぼくもいくさに征くのだけれど』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。『宇宙から帰ってきた日本人』『アナザー1964』『「本をつくる」という仕事』『ドキュメント 豪雨災害』など著書多数。(撮影:尾形文繁)
廃炉: 「敗北の現場」で働く誇り
廃炉: 「敗北の現場」で働く誇り(稲泉 連著/新潮社/1600円+税/254ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
2013年4月、高線量がれき運搬の責任者として福島第一原発(イチエフ)に赴任した大手ゼネコン、鹿島の社員は3号機の惨状を見て、敗北感に打ちひしがれた。最高の科学技術の破綻──。事故から10年、約4000人が建造物を地図から消す廃炉に従事している。「敗北の現場」の後ろ向きになりがちな仕事に人々はどう向き合っているのか。

──いろいろな人がいますね。

イチエフの現場は複雑かつ多様で、一人ひとりの立場、役割で見える風景が全然違うんです。プラント保守を手がける宇徳のオペレータ―は、4号機からの使用済み核燃料取り出しが終わっても、「達成感が得られなかった」。また、東芝のエンジニアは「後ろ向きの印象が付きまとう作業ゆえに、後ろを向いてはダメ」と言います。作業の多くが世界で初めてという状況の中、人々がどんな思いでどんな風景を見ているのかを知りたかったのだと書き終えて思います。

──中でも事故直後から福島にとどまり続ける経済産業省キャリア、木野正登さんは異色です。

木野さんは東大で原子力工学を学んだ技官です。11年3月20日に現地対策本部の広報班長に任じられてから、人事異動希望書には「一生、福島においてください」と書いて今日に至っている。国の当事者として福島に居続けるのはたいへんな仕事ですが、それを本人が希望し、実際にそうなっていることにはちょっと驚きます。

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