ロッテホールディングス会長兼社長としてこの巨大財閥を支配する重光昭夫氏(撮影日:2016年3月31日、撮影:大澤 誠)

昨年7月1日、ロッテホールディングス(HD)で11年ぶりの社長交代があった。新たに社長を兼務することとなったのは創業家出身の重光昭夫会長である。住友銀行OBの佃孝之社長は取締役特別常任顧問へと退き、半ばお払い箱となった形だ。昭夫氏は3カ月前、副会長職から長年空席だった会長の座に納まったばかり。それに続く社長兼務は日韓にまたがる巨大財閥を統率するトップの座を名実共に固めたものといえる。

が、一連の動きは日本の常識からすると一種異様ともいえた。昭夫氏は2016年、韓国で背任罪に問われ、さらに翌17年に朴槿恵(パククネ)前大統領への贈賄罪で起訴。19年10月、韓国大法院で上訴は棄却され懲役2年6カ月・執行猶予4年の有罪判決が確定した。刑務所からの遠隔経営も珍しくない韓国では、有罪判決を受けたトップの居座りにさしたる社会的批判は起こらない。が、日本では違う。起訴段階での辞任が常識であり、執行猶予期間中の復帰もありえない。

昭夫氏が横紙破りの社長就任に突き進んだのは、実兄・重光宏之氏との対立劇と関係があるに違いない。14年暮れ、昭夫氏は宏之氏を追放、以来、骨肉の争いが続く。実のところ、グループの資本構造で頂点に位置するロッテHDの株を、昭夫氏は議決権ベースで4.5%しか持っていない。対する宏之氏は資産管理会社「光潤社」の株を50%超保有、それを通じロッテHD株の31.5%を押さえる。個人名義も加えると、株主総会の重要議案に拒否権を事実上持つ。

では、なぜ昭夫氏は資本の論理にあらがいながら終始一貫して対立劇を有利に運んでいるのか。それは「従業員持株会」や「役員持株会」などを実質支配下に置いているからだ。その力の源泉はとりもなおさずロッテHDの取締役会ににらみを利かせている点にある。だから昭夫氏には取締役を離れるという選択肢はありえず、むしろ立場の強化を急いだのだろう。

このあたりの事情は宏之氏の追放劇があった当時の裏側をつぶさに見ていくとよくわかる。