東京大学はソフトバンクグループなどとAIの研究機関を発足させた(撮影:今井康一)

「なぜ日本には米シリコンバレーのような場所がないのか」「DXに不可欠なデータサイエンティストやソフトウェア人材がなぜ不足しているか」。よく聞かれる質問だ。私は回答として、「大学と新産業が十分に連動していないから」との仮説を立てている。

そもそもシリコンバレーは、何もない農地に富豪がつくった無名の大学から始まった。工学部の学部長が学生の立ち上げた企業に出資し、大成功した。それがヒューレット・パッカードだ。グーグルも、後にこの大学で生まれた。これがスタンフォード大学である。

ベンチャー投資の利益を活用すれば、他校で実績のある教授に破格の給与と充実した研究環境、豊富なデータを持つベンチャーとの協業の機会を提供し、呼び込むことができる。これが50年ほど前に無名だった大学が、世界トップクラスに上り詰めた理由だ。注目ベンチャーの創業者がふらっと構内に現れ、講義をしたり、学生へ助言やインターンシップ、就職の機会を提供したりするという貴重な体験の価値も反映している。

新しい専門分野において、大学は大きな人材供給源になる。ソフトウェアやAI(人工知能)の開発が盛んになる中、大企業の社内研究者に別の専門の研究を一からさせるよりも、最先端の技術に触れた博士課程の学生や研究者を共同開発を介して採用するほうが賢明だ。米アマゾンなどはすでに始めている。