コロナ禍においては、医学・疫学分野だけでなく、経済学分野でも精力的な分析が行われている。とくに、時々刻々と変わる政策課題に対応するため、リアルタイムでのデータ分析・政策評価が行われるようになった。背景には、膨大なオルタナティブデータが利用可能になってきたことがある。例えば、小売店の販売情報であるPOS(販売時点情報管理)や携帯電話による位置情報などだ。

データの網羅性や分析の不完全性などの点で議論の余地はある。だが、その速報的な分析は、状況に応じた即断が必要な政策形成の場への、オンタイムでの貢献を可能にする。従来の「なんとなくの空気感」で政策が決まる傾向を根本から変える可能性を秘めている。

本稿では、銀行口座の入出金記録データを使い、政府による特別定額給付金が家計の消費行動に与えた影響を分析した筆者らの研究を紹介したい。本研究は、2018年にみずほ銀行と早稲田大学との間で結ばれた協定等に基づいて行われたものであり、大学と企業との連携の有用性を示すとも思われる。また、分析は、個人が特定できないように措置を講じた環境で行われた。

20年4月、日本政府は全世帯への1人当たり10万円の特別定額給付金の配布を決定した。低所得者層や一時的な所得低下の見られた世帯に限定した給付という案もあったが、その迅速な把握が困難であったことなどから、最終的に一律給付で決着した。