「人間の能力はそれほど高くなく、とくに賢い人も、とくにアホな人もいない」と、世界史通として有名な立命館アジア太平洋大学の出口治明学長は言う。だから人類は、よい歴史も悪い歴史も繰り返しながら、少しずつ前に進んでいくのだと。

ミャンマーでクーデターが発生してひと月が経った。国民の大部分が国母として慕うアウンサンスーチー国家顧問を国軍が軟禁し、昨年11月の総選挙で圧倒的多数を占めた国民民主連盟(NLD)による政権を覆した。国民らはデモを続け、国軍の発砲で死者も出た。なんとも痛ましい事態だ。

2011年に国軍出身のテインセイン大統領が就任した後、ミャンマーは緩やかな民政移行を続け、世界に扉を開け始めた。軍事政権に対する経済制裁も解除されたことで「アジア最後のフロンティア」として注目を集めた。15年の総選挙でNLDが勝利して政権交代がなされ、スーチー氏は「国家顧問」として実質的なリーダーとなった。昨年の選挙でも圧勝し、民主体制をさらに固めようとした矢先のクーデターだった。