やまぐち・しんたろう 1999年慶応大学商学部卒業。米ウィスコンシン大学経済学博士(Ph.D.)。カナダ・マクマスター大学准教授などを経て、2019年から現職。専門は、結婚、子育てなどを経済学的手法で研究する「家族の経済学」と労働経済学。著書に『「家族の幸せ」の経済学』。
子育て支援の経済学
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菅政権独自の少子化対策とされる不妊治療の費用負担軽減。しかし、かつてイスラエルで不妊治療が無償化されたとき、人々は無償の治療を前提に、結婚、出産を遅らせたという。少子化対策とも重なる子育て支援策には出生率向上、次世代への投資、女性活躍の観点があるが、エビデンス(根拠)を欠く政策は期待とは正反対の結果を招きかねない。

育休延長よりも保育園増を 予算は根拠のある政策に

──子育て関連ではエビデンスの乏しい政策、アイデアが多い?

多くの人にとって子育ては身近なため、うまくいった経験を持つ人はそれを話したくなります。ただ、各人の状況が違うので、個人的に成功した方法が世の中にも当てはまるわけではない。政策立案などの際には、経済学を含めた科学的な研究を参照すべきです。不妊治療の件も「生む権利」のサポートならわかりますが、少子化対策としては期待できません。同じお金を使うなら、エビデンスのある政策に使うべきです。

──出生率向上に関して現金給付は意外に効果が小さいのですね。

そもそも給付が子供のために使われたか怪しい部分がある(笑)。子供のために使われたとしても、必ずしも次の子をもうけるとはなりません。目の前にいる子供の習い事やよりよい教育といった方面に使われがちで、先進国では子供の「質」重視という傾向が顕著です。

出生率向上については現物給付、とくに保育の効果が指摘されている。欧州中心の研究で、夫の子育て参加が少ないと子供は増えない、ジェンダー平等的な視点が重要だとわかってきたことが背景にあります。妻が子供を欲しがらない理由を掘り下げると、「夫が家事、育児をしない」につながる。3年間追跡調査をするとそうした家庭の多くは子供が生まれていません。