英オックスフォード大学教授 苅谷剛彦(かりや・たけひこ)1955年生まれ。米ノースウェスタン大学大学院博士課程修了、博士(社会学)。東京大学大学院教育学研究科助教授、同教授を経て2008年から現職。著書に『階層化日本と教育危機』『増補 教育の世紀:大衆教育社会の源流』『教育と平等』など。(撮影:尾形文繁)

英国在住の筆者は、過日、新型コロナウイルスのワクチン接種を受けた。対象が65歳以上に広がったというニュースを聞いた2日後に、予約可能との連絡がスマートフォンに届き、簡単な操作を経て翌日、接種を済ませた。

欧州でも感染者数がワースト級の英国では、その深刻さもあって、ワクチン対応のシステム構築が早かった。自国でのワクチン開発を急ぐとともに、接種に向けた体制づくりも早期から始まった。現在、先進諸国で使われているワクチンの承認・買い付けを最初に行ったのも英国である。接種開始の時期においても、拡張のペースにおいても、日本に比べ格段のスピードと規模感である。ほかの欧州諸国と比べても群を抜く。

住民のほぼ全員が登録するNHS(国民保健サービス)にはいろいろ問題があるといわれてきた。しかし、今回のワクチン接種に向けた取り組みでは、都市封鎖が続けられ、新規感染者数がいまだ1日1万人を超える状況下にもかかわらず、素早い対応を示した。