
中国の会計監査の信用が揺らいでいる。
2月3日、デロイト中国の社員が、55ページにも及ぶ内部告発の文書を同僚のメールアドレスに一斉送信した。この告発者は「道徳的に超えてはならない一線」を越えた不正行為があったと指摘。告発文書は中国の会計事務所業界に瞬く間に拡散された。
それによれば、告発者が勤務するデロイト中国の北京事務所では会計事務所業界の隠語で監査の手抜きを意味する「放飛機(ファンフェイジー)」や、監査の妥当性をダブルチェックする内部監査のスキップの横行、さらには(契約先企業からの)金品の授受まであったとされる。
そんな不正行為が、ヒラの会計士からシニア会計士、シニアマネジャー、パートナーにいたるまで、全階層の関係者に蔓延しているというのだ。
NYや香港で上場する企業も書かれている
財新記者が入手した告発文書には、2020年12月31日の日付が記され、2016年から2018年にかけて不正な監査が行われたとされる10の案件が列挙されていた。
名指しされた企業は、幼児向けの教育サービス企業でニューヨーク証券取引所に上場する紅黄藍教育機構、環境関連企業で香港証券取引所に上場する博奇環保、国有物流大手の中国外運(シノトランス)の子会社4社、韓国LGグループの傘下にある北京のITサービス会社の合計7社だ。
(訳注:名指しされた1社の博奇環保は、かつて東京証券取引所第1部に上場していた中国博奇[チャイナ・ボーチー]の実質同一企業。2012年に東証から撤退し、2018年に香港証券取引所に再上場した。会計監査は東証時代にもデロイト・トウシュ・トーマツが担当していた)
告発文書には不正行為の1つとされている「放飛機」の手抜きの実例も、具体的に記されている。例えば紅黄藍教育機構の監査の過程で、告発者が監査調書と会社の帳簿を突き合わせた際に、金額の不一致を発見した。