いしざか・やすあき 三菱商事勤務後、18年間の画廊経営を経て、サザビーズジャパンの社長を通算11年以上務める。

今、アート市場には5〜10年に1度しか出てこないようなクラスの名作が出品されている。大規模なレイオフの必要に迫られた企業がアートを売却したり、米国の美術館が所蔵品を売りに出したりと、その理由はさまざまだ。買い手側も「こんなときこそ、探していた作家の作品が市場に出てくるのではないか」と考えて、活発な買い取引につながっている。人気が高まっているのが、売り手と買い手が相対取引をするプライベートセールだ。当社の同分野での取引高は前年より5割増えて約1600億円となった。昨年自分が関わった印象的な案件は、すべてこうした非公開取引だった。

一般的には、供給が増えれば価格が崩れるのが市場の法則だ。ただアート市場はつねに圧倒的な作品不足。わずかな名作に対して複数の購入希望者が存在する。だから名作の価格は下がらない。先行きが見えない情勢を反映してか、ピカソやフランシス・ベーコン、アンディ・ウォーホルなど、すでに市場での評価が定まった大物作家の作品価格は安定している。