日本には2000店以上の美術店(画廊や古美術店など)が存在し、東京だと銀座や六本木、天王洲アイル、関西では京都の寺町など、特定の地域に集積している。ただし、店構えは大抵、一見(いちげん)客を拒絶するような雰囲気で、謎めいた存在だ。第一線の美術商たちに、その仕事の実態を聞いた。

作家をプロデュース

美術商と一口にいっても、扱う作品のジャンルによってその事業モデルは異なる。存命作家の作品を扱う現代アートのギャラリーの場合、無名の作家を見いだして作品に値段をつけ、個展を開いたりメディアに登場させたりといったプロデュースが重要な仕事だ。

再開発が進んで有力ギャラリーの移転が相次ぐ天王洲アイルに、今国内でトップクラスの活発な取引をしている現代アートのギャラリーがある。マキギャラリーだ。米国の人気作家、マンゴ・トムソンやマイケル・ケーガンなどから国内の若手まで幅広く扱う。海外の客が半数を占める。代表の牧正大氏(45)は、ギャラリーでの勤務を経て26歳で独立した。今でこそ年商数十億円と国内上位の売上高だが、開業時に貯金をはたいて買った30万円分の絵画から事業を拡大してきたやり手だ。

天王洲アイルに店を構え、現代アートを中心に扱うマキギャラリーの牧正大氏(撮影:今井康一)

牧氏が注力するのは、作家が制作を続けやすい環境を整備すること。一般的に、現代アートのギャラリーは作家が制作した作品を委託販売している。作品が売れれば、売価の5割を作家に還元する。