東京財団政策研究所上席研究員 早川英男(はやかわ・ひでお)1954年生まれ、愛知県出身。東京大学経済学部卒。米プリンストン大学経済学大学院にて修士号取得。77年日本銀行に入行後、長年にわたって主に経済調査に携わる。調査統計局長、名古屋支店長、理事などを歴任し、2020年4月から現職。著書に『金融政策の「誤解」』。(撮影:梅谷秀司)

国内外で深刻なコロナ禍が続く中、今夏の東京五輪開催の是非をめぐる議論が高まってきた。最近の各種世論調査をみると、日本国民の大多数は五輪の中止、ないし再延期を望んでいるようだ。一方、政府と東京都は今年7月に何としても五輪を開催するとの姿勢を崩していない。以下では、五輪開催の是非に関する経済的・政治的な損得勘定をしてみよう。

一部には、東京五輪の開催を中止すると経済的損失は数兆円規模に上る、との見方もあるようだ。4年前に東京都は「五輪の経済効果は直接効果だけで5兆円超になる」としていたから、こうした試算も不思議ではないと感じるかもしれない。しかし経済学的には、これは明らかに誤りである。