にしうら・ひろし 1977年生まれ、宮崎医科大学卒業。蘭ユトレヒト大学博士研究員、香港大学助理教授、東京大学准教授、北海道大学教授などを経て、2020年8月から現職。専門は理論疫学。昨春の緊急事態宣言時に接触8割削減を提唱し、「8割おじさん」との愛称も。(写真:本人提供)
新型コロナウイルス対策で厚生労働省への助言を続ける京都大学の西浦博教授。理論疫学での最新知見や今後の感染再拡大のリスクなどを聞いた。

──昨年、各国は全面的なロックダウン(封鎖)をしましたが、現在は部分的なロックダウンを中心に据えるようになっています。疫学研究では、新型コロナについてどんな知見が得られていますか。

1人の感染者が何人の2次感染者を生み出すのかという「実効再生産数」は感染の広がり度合いを示すものだが、何が新型コロナの実効再生産数に影響を与える要因になるかについて、4つのことが世界的に実証されてきた。それは気温、人口密度、人の移動率、そしてコンプライアンスだ。

気温が低いほど新型コロナの伝播が起きやすいことは実証研究でもはっきりしてきた。また、都市部ほどレストランなど密な屋内空間に入りやすいという意味で、人口密度は実効再生産数と正の相関関係を持っている。人の移動率については、グーグルが公表する「コミュニティ モビリティ レポート」の移動率データ(娯楽含む)を基に実効再生産数を予測すると、予測可能性が高まることがわかった。最後のコンプライアンスとは、接触につながる行動の自粛を指し、マスク着用やソーシャルディスタンスなどの度合いを含むものだ。

国・地域によって流行の濃淡が出ているのは、これら4つの要因で相当部分を説明できるようになった。最近の国内外の対策が飲食店などに的を絞ったものとなっている背景には、このような疫学上の知見がある。日本で第3波が拡大してしまったのは、政治による対策の遅れに加えて気温が相当程度効いたためと考えている。