時間を味方につけて損失を出さない投資を実践
評者/フィナンシャル・エージェンシー取締役 高橋 誠

『ブラックストーン・ウェイ PEファンドの王者が語る投資のすべて』スティーブ・シュワルツマン 著/熊谷淳子 訳(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)
[Profile] Steve Schwarzman 1947年生まれ。ハーバード・ビジネス・スクールでMBA取得。現ブラックストーン・グループ会長兼CEO。2018年に『フォーブス』誌の「世界で最も影響力のある人物」で42位にランクイン。トランプ政権で大統領戦略政策フォーラム議長を務めた。

本書はプライベート・エクイティ(PE)ファンドの創設から25年で不動産、クレジット、ヘッジファンドなど計約58兆円もの資産運用会社を作り上げた人物の自伝である。原題は『目的達成に必要なもの:卓越を追い求めて得た教訓』。自らの生い立ちから直近の諸大学への寄付行為まで、失敗を教訓にしつつ、目的の達成には何が必要かを詳細に述べている。

著者はイェール大学の学生時代からユニークなアイディアで知られ、その優秀さは折り紙付きだったようだ。ハーバード・ビジネス・スクールを経て、リーマン・ブラザーズに就職するや、若くして実績を上げてM&A部門のヘッドになる。しかし、1985年にリーマンのCEOだったピーター・ピーターソン(元商務長官)に誘われて、38歳でブラックストーンを共同で設立する。

最初のPEファンドの募集に四苦八苦するが、市場の過熱ぶりから、目標額10億ドルの未達段階で募集を終了したことによってブラックマンデーの難を免れた。募集中なら資金集めどころではなかった。しかも、ファンドは10年間のロックアップ(売却禁止)で、投資案件をじっくりと精査でき、かつ安く購入することができた。幸先のよいスタートが、成功の基盤となった。

その後も順調に拡大を続け、2007年の株式公開時には、良好な市場環境も寄与し応募超過となる。公開時の増資も合わせ、08年のリーマン危機の際には約2兆円の資金を持っていた。リーマン後の公開では集められなかったろう。

幸運に加えてリスク管理も見逃せない。底値をどう見極めるか。危機後の買いは、市場が底値から10%以上上昇した時点だった。

成功の秘訣を要約すれば、マクロ環境を見誤らない=タイミングの重要性、卓越した業績を達成するために10点満点の人材を採用する、そしてロスを決して出さない、の3点だ。3点目については、ロスなしでリターンはないと考えられるが、真意は、トレーダーが扱うような流動性のある市場とは違い、PE案件は全員で徹底的にリスクを調査すれば時間を味方につけることもできるということだ。

著者は、大きいことも小さいことも同じ努力が必要なら大きい目標に立ち向かう、という信条のもとに投資を実践し、成功を収めてきた。そのことに感服せざるをえない。

ビジネス以外でも時の政権との関わりや、大学に対する寄付活動など参考例は枚挙にいとまがない。とくに起業家、経営者に一読を勧めたい。