いとう・くにお 1951年生まれ。75年一橋大学商学部卒業。92年同大教授。2015年から現職。中央大学大学院戦略経営研究科特任教授を兼務。三菱商事や東京海上ホールディングス、住友化学などの社外取締役を歴任。現在、小林製薬、東レ、セブン&アイ・ホールディングスの社外取締役。14年に公表した「伊藤レポート」で時の人に。(撮影:今井康一)

転換期にある日本のものづくり企業において、大切なことは何か。数多くの企業に提言してきた御意見番に聞いた。

──製造立国・日本が岐路に立っています。

ものづくり自体が21世紀になって要らなくなったわけではない。独シーメンスだってものづくりを続けているし、米テスラも車載電池を自分たちで作ろうとしている。ただ、ものづくりだけでは豊かなキャッシュを創出できない。スマート工場など、ものづくりにデジタルを徹底的に掛け合わせる必要がある。

日本のものづくり企業では、日立製作所が社会システムのデジタル化をIoT基盤「ルマーダ」の横串で実現するという明確なビジョンを持って変身した。逆にビジョンや目標をはっきりさせないと、デジタルや人工知能といったこれからの時代を担う分野の人材を集められない。

──日本のものづくりにはまだチャンスがあるでしょうか。

日本企業はもともと、高度なすり合わせ力に裏付けられたマニュファクチャリング(製造)が得意だ。ただ、今後もそれに依存しすぎるのは危険だ。デジタル化とサステナビリティ(持続可能性)の時代の今、どう柔軟に適合できるかを示さないといけない。企業がサステナビリティについてコミット(公約)して地歩を固められれば、投資家からの評価も得られるはずだ。テスラの株式時価総額が、(売上高でテスラを圧倒する)トヨタ自動車の2倍強となっているのは、デジタル化とサステナビリティへの評価が掛け算となって上昇しているからだ。

目に見えない競合を意識