2021年初頭から、北朝鮮が活発な動きを示している。金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長(1月10日に総書記に就任)は元旦に、全国民に宛てた年賀状(親筆書簡)を公表した。金正恩氏が、全国民に宛てた年賀状を書いたのは初めてのことだ。北朝鮮政府が事実上運営するウェブサイト「ネナラ」(朝鮮語で“わが国”の意味)日本語版に掲載された記事によると、年賀状の内容は次のとおりだ。

〈新年おめでとうございます。新年を迎えて、全ての人民に謹んで祝賀の挨拶を送ります。

全国の全ての家庭の大事な幸福がより素晴らしく花咲くことを切に願うとともに、愛する人民の貴い安寧を心底から願います。

私は、新しい年にもわが人民の理想と念願が実現する新しい時代を早めるために奮闘するでしょう。

困難な歳月の中でも、変わることなく常にわが党を信じ支持してくれた真情に謝意を表します。

偉大な人民に仕える一途な衷心変わりないことを今一度誓いつつ。

金正恩 2021.1・1〉

冒頭で、「全国の全ての家庭の大事な幸福がより素晴らしく花咲くことを切に願う」と述べていることが重要だ。国民の生活水準と福祉の向上を重視するとの金正恩氏の姿勢が示されている。同時に、この年賀状に国防や米国、韓国との関係などがまったく記されていないことも興味深い。北朝鮮もかなり内向きになっているのかもしれない。裏返して言うと、国民生活を無視して、核兵器と弾道ミサイル開発に重点的に資金を投入する路線を続けると、金正恩氏の権力基盤が弱体化するという計算が働いているのであろう。