「当面はミラーレス集中、勝負はこれからだ」 インタビュー/ニコン常務執行役員 池上博敬

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ニコンの映像事業を率いる池上博敬常務執行役員は「当面はミラーレスカメラに集中する」と話す(撮影:梅谷秀司)

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かつてキヤノンとともにカメラ業界の「2強」を形成していたニコン。しかし、ミラーレスカメラで躍進したソニーに生産台数で抜かれ、現在は3番手に甘んじている。
デジタルカメラ市場の縮小もあり、カメラを含むニコンの映像事業の営業利益は2020年3月期に171億円の赤字に初めて転落。コロナ禍の影響を受ける2021年3月期も450億円の赤字を見込んでいる。
収益悪化に伴い、ニコンは人員削減や生産拠点の再編などを急ぐが、再建のカギはコスト削減ではなく、売上高の回復が握る。ニコンの映像事業を率いる池上博敬常務執行役員に話を聞いた。

「台数を追うことをやめた」

――新型コロナ禍でデジタルカメラ市場は大きく落ち込みました。

4月(のニコンの販売)は、レンズ交換式カメラの販売台数が前年同月比8割も減少しており、第1四半期(2020年4~6月)は本当に大変だった。ただ、中国を皮切りに世界市場は想定を超えるスピードで復調している。(市場全体の回復は)第2四半期(同7~9月)は想定を上回り、その基調は第3四半期(10~12月)以降も続くと考えている。

――フルサイズミラーレスカメラの強化策が遅れるなど、ニコン自身の戦略の失敗があったのではないですか。

(一眼レフとミラーレスの)食い合いを恐れたというより、市場を冷静に、客観的に見ることができなかった。

ミラーレス参入の際に一番懸念していたのは、(液晶モニターに映し出した像をファインダー越しに見ることのできる)電子ビューファインダー(EVF)の性能をどこまで上げることができ、さらに撮影枚数が少なくても許されるかだ。一眼レフで使われる光学式ファインダー(OVF)であれば、レンズからミラーを通してそのまま(撮影)対象物をみることができるが、ミラーレスのEVFは一度、電子データに変換して液晶・ファインダーに表示するため、ラグが生じる懸念がある。

一眼レフなら1000枚以上撮影できるが、消費電力が大きいミラーレスは500枚程度しか撮影できない。(その程度の撮影枚数では)プロやハイアマチュアなど、岩盤層の顧客に受け入れられるか疑問だった。

ただ、ニコン製作のEVFは非常に性能がよく、他社と比べても評価は高い。一眼レフのOVFと見分けがつかないという評価もあり、自信につながっている。

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