イラスト:さとうただし

「お金が儲かれば幸せになれるのでしょうか。お金を稼ぐほど、悩みや苦しみに陥ることもありますよね」

東京・銀座のとあるビルの応接室で、土地やビジネスを代々引き継いできたオーナーは静かに語り始めた。そして、「株のように毎日値が動くものは、考えるだけでストレスになる。だから、できるだけ持たないようにしているのです」と説いてくれた。

彼のように、両親や祖父母などから資産を引き継いできた“地主タイプ”はいったいどのようにして資産を運用しているのだろうか。

10億円以上の資産を持つ富裕層の資産運用を担当するプライベートバンカーたちが異口同音に明かすのは、「本物の富裕層になるほど、資産を殖やすのではなく減らさないことに注力している」という実態だ。

富裕層ほど安定を好むという仮説には、有力な証拠もある。ある大手金融機関の富裕層部門で最も売れている金融商品は、個人向け国債だというのだ。

個人向け国債とは、その名のとおり、国が個人に向けて発行する債券のことだ。購入後、半年ごとに利子を受け取ることができ、満期になると全額払い戻される。

ただ現在の利回りは、償還が10年後に設定されているものでも、年率でたったの0.05%しかない。国債を100万円分買ったとしても年に500円しか受け取れない計算だ。それでも、国が破綻しない限り必ず元本が返ってくるため、銀行預金以上に安定している。リスクの低さは折り紙付きだ。