日本ペイントホールディングスの田中正明社長兼CEOは「中期的には外国人の経営参加を考えたい」と語る(撮影:尾形文繁)
1兆円を超える超巨額M&A案件をめぐり、取締役の間で議論が沸いた日本ペイントホールディングス。2018年3月の株主総会では、日本ペイントHD株式の39%を持つアジア合弁のパートナー、Nipseaの親会社ウットラムのゴー・ハップジン社長による取締役選任候補案が出され、委任状争奪戦の可能性もあった。
結局、ゴー氏の案を会社がのみ、1年後に社外が過半数を占める新しい取締役会に招聘されたのが、三菱UFJフィナンシャル・グループで副社長を務め、産業革新投資機構の社長を務めた田中正明氏だった。
2020年に就任したトップに聞くインタビュー特集の1回目。日本ペイントHDの田中社長兼CEOに2021年の展望と戦略について尋ねた。

「田中さん、替わってくれない?」

――田中さんはもともとは旧三菱銀行の銀行員でした。畑違いの塗料会社に会長として招かれ、社長に就任するまでの経緯を教えてください。

人を介して会いたいと言われ、2015年にゴーさんと会った。彼からは一族がシンガポールで塗料事業をどう伸ばしたかを聞き、私は日本のコーポレートガバナンスが変わり始めているという話をした。誕生日は5日しか違わないし、大学も同じで、互いに親近感を覚え、その後も彼の来日時に何回かお会いした。

産業革新投資機構の社長を2018年12月に辞めたら、ただちに8社から「来てくれないか」と誘いがあった。年が明けたら考えようと思っていたら、1月にゴーさんが東京に来て「田中さん、どうするの? 引退には早いでしょ」。

シンガポールに遊びに来いというので、彼が新造した超大型クルーズ船の最初の客になった。当時彼は日本ペイントHDの会長で、こう言うんだ。「私は商売をやるのが好きで、ガバナンスは向いてない。田中さん、替わってくれない?」

確かに、日本の上場会社のガバナンスとアジアの未上場会社のそれはかなり違う。少し考えて受けてもいいと思ったが、1つ条件を出した。「マネジメントが割れている企業は絶対に成長しない。ガバナンスが変化しているときに、それを任せる人間を社内外の取締役全員一致で招きたいというのなら受ける」。五分五分だろうと思ったら、それでいいというので2019年3月に日本ペイントHDの取締役会長に就任した。