「今回のリストラで人が辞めすぎて、現場の雰囲気はとても悪くなっている。部署によっては人手が足りず、思うように営業ができていない」

国内製薬最大手の武田薬品工業は今年8月、国内の営業部門を対象に希望退職者を募集した。同社のMRは、国内全体でおよそ2000人。会社側からの発表はないため詳細は不明ながら、今回500〜600人程度が応募したのでは、という見方が社内で飛び交っている。であれば、各現場の3〜4人に1人が会社を去った計算だ。同社に残った現役MRのA氏は、冒頭のように現状を語る。

募集が始まり全対象社員に行われた面談では、人によってその内容や回数に大きな違いがあったという。武田の中堅MRのB氏は、「昔の上司の何人かから、辞めることになったと連絡が来た。私は形式的な面談2回だけで終わったが、40代後半から定年間際の人には5回以上の面談もざらにあった。『辞める』と言うまで繰り返されていたようだ」と話す。

武田側はこの希望退職を、「社会の環境変化が激しい中、これからも武田で働きたい人、そしてこれまで学んだことを社外で生かそうと思っている人にも、会社として報いるため」(ジャパンファーマビジネスユニットの岩﨑真人プレジデント)と説明するが、これを額面どおりに受け取るのは難しいだろう。

大規模なリストラに乗り出した武田薬品の本社(撮影:尾形文繁)

「生産性8倍」の号令

退職者が確定した11月、社内で組織の再編が行われた。新体制になってからの営業現場では、「生活習慣病(糖尿病や高血圧など)の領域の薬を担当するMRは、“生産性”を今までよりも上げろ!」という号令がかかっている。ある部署では、これまでの8倍の業務量をこなすよう指示を飛ばす上司もいるという。

武田の国内営業部門は、がんや精神疾患など、領域ごとに「ビジネスユニット」と呼ばれる部門で成り立っている。今回の再編の目玉は、ビジネスユニットの中でとくに規模が大きかった生活習慣病部門の縮小だった。再編によって、これまで全国に150以上あった営業所は7割減らされて50カ所になった。

希望退職者募集開始後の面談では、「年齢だけでなく、担当する薬の領域でも回数に差があった。がんや専門性の高い疾患の担当者は1回、生活習慣病担当者は2回かそれ以上がスタンダードだったようだ」と前出のB氏は話す。