有料会員限定

沖縄県初の芥川賞作家、大城立裕氏に学んだこと[下] 沖縄のアイデンティティーを築き、維持しようと説いた大城氏の思い

✎ 1〜 ✎ 285 ✎ 286 ✎ 287 ✎ 最新
拡大
縮小

大城立裕氏の小説「辺野古遠望」(2018年新潮社刊『あなた』に収録)を精読すると、沖縄と日本の関係悪化という結果をもたらしたのは辺野古新基地建設問題だ、という認識が間違っていることがよくわかる。沖縄と日本の歴史的関係、さらに日本による沖縄差別という構造が原因であり、辺野古問題はその結果なのだ。もっとも差別が構造化している場合、差別している側は自らが差別者だと認識していないのが通例だ。圧倒的な力の前で、差別されている側は我慢するという形でしか抵抗できない。

このような沖縄人の心情を大城氏はこう表現する。〈琉球処分という言葉が昨今、日常語になっている。この現状をまるで百三十九年前の強制接収と同じだと見ている。置県後は言葉や生活習慣にいたるまで、同化意識と劣等感との複雑な絡み合いをつづけた。いま、この状況に、しばらくは我慢して続けるしかない、というのが私の趣旨であった。抵抗と我慢とは、対立するようで、じつは一つのものであってよいと、私は暗に伝えたつもりである〉(『あなた』102ページ)。

関連記事
トピックボードAD
連載一覧
連載一覧はこちら
トレンドライブラリーAD
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT
有料法人プランのご案内