米国1極体制の世界秩序は米中による2極体制に移行しつつあると考えている人は多い。中国共産党は2008年のリーマン危機と今回のコロナ禍にすばやく適応し、支配力を一段と強めてきた。強権路線を突き進む中国は、米国の言いなりになりたくない国々にとっては今や勇気の源になっている。これらの国々は精神的な支援だけでなく、物的な支援をも中国に仰ぐことが珍しくない。だとすれば、中国がもう1つの極になるのは至極当然ではないのか。

だが、2極化した世界は極めて不安定なものだ。「トゥキディデスのわな」の理論によれば、新興勢力が台頭すると既存覇権勢力との間で戦争になる危険性が高まる。それだけではない。2極体制では、世界的な問題への対処も2つの覇権国家の国益次第となる。そうなれば、テクノロジー支配、人権、気候変動といった人類の3大課題は無視され、状況は一段と悪化していくに違いない。

米中は同じ穴の狢(むじな)

米中対立では技術覇権争いが前面に出ることが少なくないが、実は双方の利害はかなり似通っている。人工知能(AI)などを使い、政府や企業が一般人を監視し、支配する世の中を本気でつくり上げようとしているのが米中だ。