東京財団政策研究所上席研究員 早川英男(はやかわ・ひでお)1954年生まれ、愛知県出身。東京大学経済学部卒。米プリンストン大学経済学大学院にて修士号取得。77年日本銀行に入行後、長年にわたって主に経済調査に携わる。調査統計局長、名古屋支店長、理事などを歴任し、2020年4月から現職。著書に『金融政策の「誤解」』。(撮影:梅谷秀司)

海外の人たちから「日本化(ジャパニフィケーション)」という言葉を聞く機会が多くなった。少し前まで低成長、低インフレ、低金利の常態化は、経済政策の失敗の結果、日本だけが抱えている「日本問題」だと考えられていたが、今ではそれが日本だけの問題ではなくなったという認識があるのだろう。だが、先進国全体が日本化しつつある背景には、少なくとも欧米における「日本問題」への誤解が、一因として作用しているのではないかと思う。

まず、日本経済が長期停滞に陥ったのは1990年代初頭だから、97〜98年の金融危機以降に始まったデフレより前である。バブル崩壊の後遺症に加え、グローバル化やデジタル化への日本企業の対応の遅れが大きく影響したと考えられる。にもかかわらず、欧米では日本問題の基本はデフレであり、デフレは金融政策失敗の結果と決めつけ、日本に大胆な金融緩和を求めた。

しかし、7年半余り前に始まった黒田東彦総裁下の日本銀行による「異次元緩和」の実験は、日本経済の長期低迷の原因はデフレだけではないこと、量的緩和は資産価格(円安、株高)には有効でも、経済成長を高める効果はないことを明らかにする結果となった。