2014年にリニア中央新幹線の建設が始まり、今から17年後には3大都市圏を結ぶ大規模交通インフラが誕生することになっている。静岡県とJR東海の大井川水資源をめぐる対立により事実上の開業延期が表明されたものの、計画では27年に東京─名古屋間で開業し、37年には大阪まで延伸する予定だ。

全線開業後は東京─大阪間の移動時間が現在の半分以下、67分になるため、人々の往来が活発になり、延伸地域間の経済的結び付きが強くなると予想される。巨大都市圏全体が集積のメリットを享受し、延伸地域全体の地域経済が成長するだろう。

交通インフラの開業は、都市間の経済活動に大きく影響する。実際、1964年の東海道新幹線開業は東京と大阪の力関係を変化させた。本社機能を東京に移転する企業もあり、企業活動における大阪の重要性が低下したのだ。

経済学は、交通インフラの整備が地域経済や経済活動分布に与える影響に関心を向け続けてきた。例えば空間経済学(とくに新経済地理学)の基本的なモデルでは、異なる規模の2都市間の交易費用が経済統合によって低下すると、より規模の大きい一方の都市へ、経済活動が急激に集中することが示されている。これは大都市(口)が小都市(コップ)から経済活動(水)を吸い込む「ストロー効果」とも一致し、東海道新幹線のケースもその一例と捉えることができる。

多くの研究で、交通インフラは延伸地域の地域経済にプラスの影響を与えるという結果が出ているが、マイナスの影響を与えたという研究結果も存在する。この違いの原因は、延伸地域の多様性にあると考えられる。九州新幹線鹿児島ルートの開業に着目した筆者と東京大学の佐藤泰裕教授の研究では、ルート上の地域経済の受ける影響が均一ではなく、都市圏間で経済活動の分布も変化するという可能性について検証した。