今回の米大統領選挙は、民主主義を守るかどうかの決戦だった(写真はバイデン次期大統領)(AP/アフロ)

米国では大統領選挙の結果を受け、政権移行の手続きも始まり、ようやく政治は落ち着きを取り戻すように見える。ドナルド・トランプ大統領の奇矯な言動に注目が集まっていたが、この選挙では民主主義の正攻法の重要性を思い知らされた。

ジョー・バイデン前副大統領の勝利は、ペンシルベニア、ミシガンなど接戦州での勝利の賜物である。そして、これらの州での勝因の1つに、各州の中心都市において黒人が投票に行ったことがある。

黒人を動かしたリーダーの一人に、ステイシー・エイブラムズという黒人の女性政治家がいる。米国では市民は有権者登録をしなければ投票できない。そして共和党が支配する州では、黒人の登録申請に難癖をつけて有権者と認めない、有権者名簿から削除するという差別が横行している。こうした現実を知る者にとっては、トランプ氏の不正選挙というクレームが荒唐無稽のたわごとであることは明らかである。エイブラムズ氏自身も2年前に立候補したジョージア州知事選挙にてそうした不正で敗れたといわれる。しかし、今年の大統領選を目指して黒人の登録運動を広めた。フィラデルフィアなどでも同様の運動があった。政党の草の根活動家が有権者を組織化するという正攻法が、バイデン氏勝利をもたらしたのである。

ヒラリー・クリントン氏が司会を務める「You and Me Both」というラジオのトーク番組(ポッドキャストで日本でも聴ける)の11月10日の回にエイブラムズ氏が登場し、この間の努力を語っていた。1960年代の公民権運動以来、差別と闘い、個人の尊厳を求める戦いが今も受け継がれていることに深い感銘を覚えた。差別を公言する大統領の下で尊厳を脅かされた人々にとっては、今回の大統領選は、まさに民主主義を守るかどうかの決戦だったのである。