電力新市場で「異例の高値」の波紋 新電力会社の経営を圧迫、料金値上げも

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電力の安定供給の確保を目的に創設された容量市場がエネルギー業界に波紋を広げています。入札で想定以上の高値がついたためです。制度を設計した経済産業省の「誤算」を追いました。

発電所の維持に多額の収入が流れ込む(写真は本文と関係ありません、記者撮影)

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電力の安定供給の確保を目的として、「容量市場」という新たな取引市場がこのたび創設された。7月に行われた1回目の入札では予想外の高値がついた。

7月の入札結果について、自由化で電力小売事業に参入した新電力会社から、「高値入札により容量拠出金の支払額が高額になったことで、事業の存続を脅かされる」という声が相次いでいる。専門家の間からも制度設計の不備を指摘する声が上がっている。

制度作りを進めてきた経済産業省は入札結果を取り消すことはしないと説明するが、制度の手直しが急務になっている。

投資促進の狙いでスタートしたが…

日本卸電力取引所が運営する「卸電力市場」では、「1キロワット時(kWh)当たり××円」といった形で電力の量(キロワットアワー価値)が売買されている。これに対し、容量市場では、将来のある時点での「供給力」の価値(いわゆる「キロワット(kW)価値」)が取引される。供給力とは、火力発電所や原子力発電所などを稼働できるようにしておくことによって確保される発電能力を意味する。

電力自由化や再生可能エネルギーの導入拡大とともに電力価格(キロワットアワー価値)の低迷が恒常化し、電源(発電設備)の投資が滞ることで電力供給が不足しかねない。そうした事態を避け、発電設備への投資を促進する狙いを込めて容量市場はスタートした。

だが、7月に実施された容量市場の1回目の入札結果は、入札上限価格に迫る1kW当たり1万4137円という、世界でも例のない高値での取引となった。

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