週刊東洋経済 2020年11/28号
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プロローグ|菅首相が追い込む地銀の崖っぷち

(JMPA代表撮影:三宅史郎)

それは、ある地方銀行が記者クラブで決算発表をしている最中のことだった。

「日銀が地銀再編を支援する新しい制度を発表しましたが、どう受け止めていますか」

質疑に応じていた頭取にも初耳の話。当然、想定問答なども用意しておらず、しどろもどろになってしまったという。

同じ時刻、別の地銀では、経営企画部の電話がけたたましく鳴り響いていた。「どういうことですか」「詳しく聞かせて」。経営陣はもちろん、各部署からも問い合わせが相次いでいたのだ。

まさに蜂の巣をつついたような騒ぎになったのは、11月10日に日銀が突然、「地域金融強化のための特別当座預金制度」を発表したからだ。

この制度は、地銀と信用金庫を対象とし、経費削減や経営統合に取り組むことを条件として、日銀への当座預金に年0.1%の上乗せ金利をつけるというもの。2022年度までの時限措置として導入するとしている。

具体的な条件としては、経費を業務粗利益で割った経費率(OHR)の改善率が19年度から22年度までに4%以上になること、経費の改善額が同時期に6%以上になること、そして23年3月末までに合併や連結子会社化といった経営統合を決定すること。これら3つのいずれかを満たした場合に対象となる。

ここ数年、地銀を苦しめてきたマイナス金利政策が、条件付きとはいえ一部修正されることに、地銀は色めき立ったのだ。

こうした発表を受けて、ある地銀では、「削れる経費をすべて洗い出せ!」との大号令がかかったという。 

地銀の反応はさまざまだ。「チャレンジしたい」「経営統合によって費用がかさんでおり、達成は可能。すぐ申請したい」と歓迎する声が上がる一方で、「かなりの経費をすでに削っており簡単ではない」「これまで再編に取り組んできた地銀が損をすることになり不公平」といった不満も聞かれる。とはいえ、どの銀行も「達成できるかどうかは別にして、取り組まない手はない」と前向きだ。

相次ぐアメとムチ