日本福祉大学 福祉経営学部教授 藤森克彦(ふじもり・かつひこ)1965年生まれ。長野県出身。国際基督教大学教養学部卒業。同大学大学院行政学研究科修士課程修了。日本福祉大学にて博士号(社会福祉学)取得。2017年から現職。みずほ情報総研主席研究員も務める。専門は社会保障政策。著書に『単身急増社会の希望』など。(撮影:尾形文繁)

「『自助・共助・公助』そして『絆』」──。菅義偉首相は10月の所信表明演説で、自身が目指す社会像をそのように語った。具体的には「まず、自分でやってみる。そして、家族、地域で互いに助け合う。そのうえで、政府がセーフティーネットでお守りする」という。

公的支援の前に、できる限り個人や家族の力で生活上のリスクに対応することは、従来行われてきた。とくに、家族の支え合いは日本の特徴だ。この背景には、皆婚社会の下で夫が正社員として安定的に雇用される一方、親の介護や育児などを妻が担うといった、世帯内の男女の役割分担を「標準」としてきたことがある。実際、公的介護保険が導入されたとはいえ、2019年に要介護者を抱える世帯に「主な介護者」を尋ねると、7割弱が「家族」と回答している。

そして、日本では家族が大きな役割を担っているために、政府の役割は小さい。一般に高齢化率が高ければ、社会支出(対GDP〈国内総生産〉比)も高い傾向がある。しかし日本は、高齢化率がOECD(経済協力開発機構)諸国中、断トツで高いのに社会支出は中位である。高齢化率を勘案すれば、日本は「低福祉」の水準だ。