廃業を発表した米動画配信サービス「Quibi」。縦でも横でも視聴できるのを売りにした

あらゆる業界の勢力図が目まぐるしく変化する中、名の知れた創業者が率いるベンチャー企業は星のごとく光って見えるだろう。DXのために新たなビジネスの種を探す大企業が、そうしたベンチャーと提携の機会を得たいと思う気持ちも大事だが、冷静な目利きも欠かせない。

10月21日、あるベンチャー企業が廃業するというニュースが全米を駆け巡った。動画配信サービスを手がける「Quibi(クイビー)」だ。今年4月にサービスを始めたばかりだったが、利用者数を伸ばせなかったとみられる。

「クイックバイト(軽食)」という意味のクイビーは、プロが制作した1本8~10分のドラマやドキュメンタリーの番組を提供する動画配信サービスだ。ネットフリックスの短尺版ともいえる。スマートフォン向けに設計されており、広告付きで月額5ドル、広告なしが月額8ドルだ。動画は縦向きでも横向きでも視聴でき、ダウンロードもできる仕様だった。

クイビーの注目度は、サービス開始前からそうとうに高かった。今年1月、筆者は米ラスベガスで開催された、世界最大のテクノロジー見本市「CES」に参加。世界的大企業のトップが登壇する基調講演の中に、まだ名もないクイビーの名前があった。

基調講演に起用されたのは経営陣の知名度が高かったためだろう。メグ・ホイットマンCEOは米ネット通販大手のイーベイや米パソコン大手、ヒューレット・パッカードのトップを歴任。もう一人の創業者であるジェフリー・カッツェンバーグ氏も、米ウォルト・ディズニーで『美女と野獣』などを手がけ、米アニメ制作大手のドリームワークス・アニメーションを立ち上げた人物だ。