2010年のJAL破綻時、再建を託された京セラの稲盛和夫氏(現名誉会長、写真左、撮影:鈴木紳平)

「『ANAではなくてJALか』と驚いた。まさに青天の霹靂だった」

ある市場関係者は日本航空(JAL)の「奇襲」についてこう振り返る。

JALは11月6日、公募増資などにより最大で1679億円を調達すると発表した。同社の公募増資は、アメリカ同時多発テロやイラク戦争、SARS後の2006年に実施して以来のことだ。

調達資金のうち、800億円はメーカーと契約済みの機材の導入に、150億円はグループLCC(格安航空会社)の強化に使う。空港の設備更新に50億円を充て、残額は有利子負債の削減に用いる。

JALの発行済み株総数は約3億3700万株。公募増資などで約1億株を新規に発行するため、3割近く希薄化することになる。公募増資が発表された翌営業日9日の終値は、前営業日比202円安の1641円と大幅に下落した。

JALの木藤祐一郎財務部長は「新たに1億株を発行するため、既存株主には相当迷惑をかける可能性がある。経営陣がポストコロナで、しっかりと企業価値を高めることで報いる」と理解を求めた。

ANAに先行して公募増資に踏み切る

調達規模の大きさもさることながら、業界関係者を驚かせたのはそのタイミングだった。2020年4~9月期にともに営業赤字を計上するが、財務体質でJALに劣後しているライバル・ANAホールディングスに先行して公募増資に踏み切ったからだ。

2020年9月末時点で2社の自己資本比率は、ANAが32.3%、JALが43.6%と差をつけている。JALの2020年4~9月期業績は、営業利益に相当するEBIT(利払い前・税引き前損益)が2239億円の赤字(前年同期は829億円の黒字)と大苦戦。ANAと同様に運航規模の大きい国際線が回復する見通しが立たず、2021年3月期の最終赤字予想も2400〜2700億円と手をこまねいているわけにはいかなかったのも事実だ。