消える「第3のエアライン」 エアアジア撤退が意味するもの

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2014年、2度目の日本市場参入時に記者会見で楽天の三木谷浩史氏らと肩を組む、エアアジアのトニー・フェルナンデスCEO(撮影:尾形文繁)

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日本航空(JAL)やANAホールディングスが巨額赤字を計上する中、LCC(格安航空会社)のエアアジア・ジャパンは11月17日、東京地方裁判所に破産手続き開始の申し立てを行った。新型コロナ影響により航空会社が経営破綻する、日本で初めてのケースとなった。

エアアジア・ジャパンは12月5日をもって全路線を廃止することを決めていた。「事業を継続することは極めて困難であると判断し、事業を廃止するという苦渋の決定をいたしました」。エアアジア・ジャパンの会田純COO(最高執行責任者)が報道各社に寄せたコメントには悲壮感が漂っていた。

同社には事実上の親会社であるマレーシアのエアアジアグループが33%を出資しているが、コロナ禍がエアアジア本体を直撃した格好だ。

2度目の日本撤退

アジア各国に路線網を抱え、世界屈指のLCCグループであるエアアジアにとって、今回は2度目となる日本撤退だ。同社は2012年、国内最大手の全日本空輸(現ANAホールディングス)との合弁で日本に参入。しかし、ANAとの間で経営方針をめぐってすれ違いが生じ、搭乗率も苦戦。参入からわずか1年で撤退に追い込まれた。

2014年には楽天やノエビアホールディングス、アルペンなどをパートナーにして再参入。拠点空港には競合の少ない中部国際空港を選んだ。新千歳と仙台、台北の3路線を運航し、2020年8月には福岡線を開設した。しかし、新型コロナ影響により、春先から各路線で運休が発生。6月には社員約300人の2割強にあたる70人弱の希望退職を実施した。

本体のエアアジアグループも、新型コロナ影響で業績が急速に悪化している。2019年12月末には17.5%だった自己資本比率が2020年6月末時点で8.3%にほぼ半減した。エアアジア・ジャパンの2019年12月期は40億円の売上高に対し、42億円の営業赤字。2度目の日本参入もあきらめることになった。

しかし、エアアジア撤退は、単なるLCC市場の競争・淘汰以上に大きな意味がある。これにより、国内主要航空会社からANA、JALに続く「第3勢力」が消滅するからだ。

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