大正大学地域構想研究所教授 小峰隆夫(こみね・たかお)1947年生まれ。東京大学卒業。経済企画庁経済研究所長、物価局長、調査局長、国土交通省国土計画局長などを経て、2020年4月から現職。日本経済研究センター理事・研究顧問も務める。著書に『人口負荷社会』『日本経済論の罪と罰』『政権交代の経済学』など。

経済全体の姿は、支出(需要)、生産(供給)、所得(分配)の3つの側面から観測される。このうち、四半期速報GDP(国内総生産)=QEとして公表されるのは、呼び方はGDPだが、その実体は消費、設備投資、公共投資、輸出などの支出面の姿である。生産、所得面については、毎年末に公表される年度確報を待たなければならない。

欧米では、QEに合わせて生産、所得面の姿も公表されている。最新時点での家計の可処分所得、貯蓄率などが、国民経済計算と整合的な形でわからないのは、日本の欠陥だと指摘されてきた。

そこで内閣府経済社会総合研究所は2019年8月から、四半期ベースの家計可処分所得・家計貯蓄率の速報値(以下、新推計値)の公表を開始した。私は、1997〜98年に同研究所の前身である経済企画庁経済研究所の所長を務め、こうした推計値の必要性を十分承知していたが、予算・人員面などで力が及ばなかった。新推計値公表を強く支持する一方、推計に当たる職員の労働強化にならなければよいがと考えてしまう。