かわだ・しんいちろう 1973年生まれ。弘前大学大学院理学研究科生物学専攻修士課程修了。名古屋大学大学院生命農学研究科入学後、ロシアの科学アカデミーシベリア支部留学を経て、農学博士号取得。2005年国立科学博物館就職。11年、博物館法施行60周年記念奨励賞受賞。著書に『モグラ博士のモグラの話』など。(撮影:風間仁一郎)
標本バカ
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車線上の無残な動物の轢死体(れきしたい)。瞬時に目をそむけ、遭遇した不運を呪った経験はないだろうか。しかし筆者は違う。「かわいそうに」を飛び越えて、噴き出す感情は「もったいない!」。

博物館は“未来のため”に存在、標本はあればあるほど理想的

──動物園でキリンが死んだとか、海岸にクジラが漂着したとか、連絡が入るとすべて無条件に引き取って、標本にするんですか?

基本的に分別はせず、とりあえず標本にします。今は駆除されたイノシシが毎週栃木から送られてきて、今日は3箱。頭部だけたぶん12〜13個体。頭骨は、何歳くらいの個体がどこに棲息してるかなど、研究で使う人が多いんです。

──近辺の事故死体なんかも、電話で知らされれば拾いに行くと。

ただし犬・ネコは回収しないと決めてます。もしかしたら飼い主とか近所で餌やってる人が捜してるかもしれない。見つけたら、ちゃんと埋葬してやりたいかもしれないじゃないですか。そうだったら申し訳ないし、迷惑だから。

──この本で標本とは、骨格標本と、皮を剥いで防腐処理した後に綿を詰め、手足を伸ばして整形した仮剥製ということですね。

哺乳類の場合、骨と皮を残すのが基本です。毛皮は腐りやすいので残さない場合もあるけど、残せるものはできる限り残す。われわれが作るのは研究用の仮剥製です。

仮剥製はたくさんあることに意味がある。1匹1匹の差異を後々の人が見て比較できるよう、できるだけたくさん残しておこうという考え方で作っているんです。標本はあればあるほど理想的。僕は就業時間の9割を標本処理に割いてるかな。年に10本論文書くより、博物館にとってはこっちのほうが大切だと思ってるから。