所信表明演説で述べた「国民のために働く内閣」というスローガンも空疎に響く(日刊現代/アフロ)

10月26日に臨時国会が始まり、発足後約40日にして初めて菅義偉政権が国会論戦に臨む。所信表明演説と立憲民主党による代表質問を聞いた時点で得られる情報に基づいて、この政権の課題について考えてみたい。

所信表明では、いくつかの新機軸の提起があった。地球環境問題や社会保障・福祉について消極的という自民党のイメージを払拭するべく、2050年までに温室効果ガス排出をゼロにするという大胆な脱炭素社会を目標に掲げ、不妊治療に保険を適用することを表明した。また、働く女性、大学生などの若者、貧困家庭の子どもに対する政策の拡充も訴えた。これらは党派を超えた喫緊の課題であり、政策の深化が求められる。

しかし、自民党ならではの限界も見られる。脱炭素社会の実現のために原子力発電を存続させるのが自民党政権の路線である。これは、再生可能エネルギーの拡大による脱炭素社会を目指す世界の趨勢に反するガラパゴス化の道である。東芝や日立製作所など原発関連の会社の苦境を直視しない反産業政策といってもよい。放射性廃棄物の最終処分場を金の力で過疎の地方に押し付ける動きが繰り返されているが、過去の失敗からまったく学んでいない。

また、「自助、共助、公助」という首相の順位づけでは解決されない困難が、あまりにも多い。例えば10月28日の毎日新聞に、昨年、神戸市で22歳の幼稚園教諭が祖母の介護を背負わされ、疲れ果てて祖母を殺害し、最近の一審で執行猶予付きの有罪判決が出たという記事があった。これは極端な悲劇かもしれない。しかし、働きたい、あるいは働かなければならない大人が増え、ほかの家族の面倒を見ることに専念できるメンバーが減っていることは事実である。そのように家族の機能が低下する中で自助、共助を要求すれば、誰かがケアの重荷を背負い込み、耐えきれず犯罪に走ることはどこでも起こりうる、という認識で政策を拡充することが必要である。