地下世界をめぐる冒険 闇に隠された人類史(ウィル・ハント 著/棚橋志行 訳/亜紀書房/2200円+税/293ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
[Profile] Will Hunt 米国出身。雑誌社の記者を経てノンフィクション作家に。米ニューヨーク大学パブリックナレッジ研究所客員研究員。トーマス・J・ワトソン財団、ニューヨーク芸術財団、ブレッド・ローフ作家協議会などから奨学金および補助金を授与される。

地下愛好家という人々がいるらしい。皆が寝静まった真夜中に都市の下水溝や地下鉄のトンネルに忍び込み、日常では味わうことのできない感覚を求める人々だ。

本書の著者、ウィル・ハントもそんな地下愛好家の1人だ。きっかけとなったのは、16歳のとき、近所の廃棄されたトンネルに潜り込んだ際に見た光景だ。トンネルの奥深く、何者かが作ったバケツの祭壇に天井から染み出た水が滴り落ち、バチでドラムを叩(たた)くようにして神秘の音色を奏でていた。以来、彼は世間から隔絶した暗闇の世界に魅せられることになる。

成人した著者はニューヨークを活動の拠点とする。そして夜になると地下鉄のトンネルへと潜り込み、ニューヨークの地下世界を探索しにいく。それは、脳の奥底、本能からくるゾクゾクとした感覚と、都市そのものが1つの有機体のようにうごめいている事実を著者に知らしめた。彼はこの感覚の正体を知るため、世界中の地下世界を訪ね歩く。