【ワンポイント解説】
MMT(Modern Monetary Theory)

ポストケインズ学派の流れをくみ、貨幣が実体経済に与える影響を重視するマクロ経済学説。「政府・中央銀行はいつでも自国通貨を発行できるため、国家は自国通貨建てであれば、どのような債務も返済できる」と主張する。ただ、「インフレは制御する必要があり、インフレ圧力が高まるときは増税や支出削減によって、市中の通貨を回収・抑制してインフレ圧力を相殺する必要がある」とも説く。

コロナ危機で国家債務への見方は大きく変わった

――新著は、アメリカでベストセラーになりました。MMTの属するポストケインズ学派は、これまでマイナーな存在でした。なぜ急に多くのアメリカ人に読まれるようになったのでしょうか。

まさに読まれるべきときに出版されたのが大きいと思う。

2019年を振り返ると、アメリカ大統領選挙に出馬した民主党候補者は23人にも上り、バーニー・サンダース氏や(その後副大統領候補になった)カマラ・ハリス氏を含め、たくさんの候補者が演説で国民皆医療保険創設や学生ローン債務免除、グリーンニューディール(脱炭素化関連の公共事業)などのインフラ投資事業を選挙公約に掲げた。

その際、どの討論番組でも「では、財源はどうしますか?」という質問が発せられた。2019年を通じて、政治討論でアメリカ全体を支配した最大の質問は「お金をどこから持ってくるのか」だった。「政府が何かをやるとき、財政赤字を当てにすることはできず、誰かの税金を見つけてきて、それで新たな支出を相殺しなければならない」という考えがすべての議論のベースにあった。

ところが2020年3月に新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な流行)が起きると、議会は何兆ドルもの財政支出法案を可決させた。一瞬にして「財源はどうするのか」という質問は消えてしまったのだ。