悩み多き地銀に3つの道、再編抜きの生き残りは可能か
評者/上智大学准教授 中里 透

『消える地銀 生き残る地銀』野崎浩成 著(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)
[Profile] のざき・ひろなり 1986年慶応大学経済学部卒業、91年米イェール大学経営大学院修了。ABNアムロ証券、HSBC証券などのアナリストを経て、2018年から東洋大学教授。シティグループ証券時代に日経ヴェリタス人気アナリストランキング(銀行部門)05〜15年1位。

平成、とりわけその前半は金融機関にとって激動の時代であった。不良債権の処理に苦しむ中、生き残りをかけて合従連衡が繰り返され、街中で見かける金融機関の看板も大きく様変わりした。1989年の時点では13行を数えた都市銀行は、3つのメガバンクともう1つのグループに集約され、都市銀行という呼称自体が死語となった感がある。

こうした中にあって、相対的に安定を保ってきたのが地方銀行だ。相互銀行から普通銀行へ転換した第二地方銀行については、他業態と同様に大きな変化が生じたが、全国地方銀行協会加盟の64行については、変化は穏やかなものであった。

もっとも、人口減少に伴う顧客基盤の縮小と低金利環境の継続による収益力低下のために経営環境は年々厳しくなり、地銀も大きな変革を迫られつつある。こうした中で刊行された本書には、「悩み多き地銀」の今後の展望が、緻密な現状分析をもとに丁寧に描かれている。

著者によれば、いま地銀は自然淘汰と適者生存の時代を迎えているという。人口減少と低金利に加え、フィンテックの進展による新たな競争相手の出現が、経営環境を一段と厳しいものにしているからだ。このような環境変化への対応策として、本書では「3つの道」が提示されている。

その1つは、再編統合を通じて環境に適応する方途であり、同一地域あるいは近隣の地銀が統合を通じて地域市場でのプライスリーダーシップを目指す「面での再編」と、機能面での連携を通じた緩やかな連合体の形成が、選択肢として挙げられている。

2つ目は銀行以外の業態が提供するプラットフォームのもとに各地域の地銀が集結する方途であり、SBIホールディングスが掲げる「第4のメガバンク」構想がその具体例だ。3つ目は再編統合に頼らず、むしろ経営規模の大胆な縮小を通じて特化とコストの低廉化を実現するものであり、先端的なデジタルバンキングへの移行と、伝統的なコミュニティバンキングへの回帰という2方向の選択肢が用意されている。

本書は地銀全体を俯瞰する視点から記述がなされており、地域金融機関と地元企業の結びつきといったミクロの視点がやや弱いきらいはあるが、地銀だけでなく今後の金融業全体のあり方を考えるうえで多くの示唆に富んでいる。「頭の体操」として最終章で提示されている、各地域の地銀の再編に関する展望も興味深い。