「スマートシティの主戦場はアジア」 インタビュー/三菱商事執行役員 荻久保直志

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三菱商事の荻久保直志執行役員は「スマートシティ開発は商社の強みを生かせる」と語る(撮影:尾形文繁)

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新型コロナウイルスの逆風は、大手総合商社の三菱商事にも吹き付けている。
経済活動の停滞などから、収益柱である原料炭や天然ガスの市況が悪化し、自動車関連の収益も大きく後退する。2021年3月期の当期純利益の見通しは2000億円。2020年3月期と比べて約6割減、3000億円以上落ち込む。
先行きが見通せない中、三菱商事が次の一手として着目するのがスマートシティ開発の推進だ。簡単に言えば、デジタル技術を活用して都市のさまざまな課題を解決し、暮らしやすくした街だ。
東南アジアでスマートシティ開発を推進する複合都市開発グループの荻久保直志・都市開発本部長に話を聞いた。

かゆいところに手が届くサービスが可能に

――あまり実感が湧かないのですが、スマートシティは従来の街と何が違うのでしょうか。

一言でいえば、「利便性と環境性に優れた街」ということだ。都市のオペレーティングシステム(OS)をつくってサービスを提供する。街のあちこちに設置したカメラやセンサーなどのデバイスから都市の情報を収集し、交通・移動データや購買・消費データを集積し、互換性のあるデータに変換するのが都市OSだ。これをAIで分析してさまざまなソリューションにつなげる。

サービスとしては例えば、オンデマンドバス(利用者の予約に応じて行きたい場所に移動できるバス)、病院とネットでつなぐ遠隔医療が考えられる。飲食店のデリバリーの予約から自宅の電気代支払いまで、専用アプリで何でも済ますという構想もある。

住民に同意いただいたうえで購買・消費データなどを収集し、それを活用することで、かゆいところに手の届くようなサービスを打ち出していけるだろう。

――垣内威彦社長もスマートシティ開発の必要性を強調しています。

スマートシティを含めた大規模開発には2つの切り口がある。街をつくって売却したり、賃料収入を得ること。もう1つが街の運営だ。

垣内社長からは、「街の中でリテール(小売り)やモビリティ、エネルギーといった分野のサービスを提供していくことに注力してほしい」と言われている。

三菱商事には強い事業や付加価値を提供できるグループ会社がたくさんあるので、垣内社長は「(各グループで力を結集して伸ばしていける)複合都市開発は面白いんじゃないか」と言っている。

スマートシティ開発は、総合商社の総合力や各産業との”接地面積”の広さという強みを生かせるビジネスだと思っている。各グループの壁を低くして横串を刺すことで、しっかり展開していきたい。

三菱商事がインドネシアのジャカルタ郊外で開発予定のスマートシティの完成予想図(三菱商事提供)

――具体的に、どのような国々でスマートシティ開発を進めていくのでしょうか。

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