2020年現在、世界人口の半数以上が都市に住んでおり、その割合は50年までに7割に達する。世界銀行のリポートでは、そう予測されている。都市化が進む中で、今、都市の内部構造や都市問題を扱う都市経済学には、より大きな注目が集まっている。

賃金と不動産価格の関係

そんな都市経済学分野の重要なモデルの1つが、「空間的一般均衡モデル」だ。このモデルによると、ある地域の名目賃金がほかより高い場合、その地域では不動産価格も高くなるとされる。また、ある地域で景観などの都市アメニティー、つまり住み心地がほかの地域より充実している場合には、実質賃金が低くなる。

平たく言ってしまえば、フリーランチ(ただ飯)を提供してくれる地域は存在せず、すべての地域は同じだけの効用を提供する。もし、ある地域の効用が際立って高い場合は、外部から人口が流入して不動産価格上昇や賃金下落が起こり、結果的にこの地域の効用もほかの地域と同じになる。

空間的一般均衡モデルは、米国をはじめ先進国では、現実の状況に一致すると実証されてきた。しかしこのモデルは、労働者の自由な移動を前提に構築されているため、人口移動率の低い途上国でも成立するのかが、都市経済学における大きな研究課題だった。

米ハーバード大学のエドワード・グレイザー教授とその共同研究者らは、この問いに答えるために、米国の都市部のデータを、ブラジル、中国、インドの都市部のデータと比較した。そして、空間的一般均衡モデルが各国で成り立つかどうかを検証するために、次の4点について調べた。