11月の大統領選挙をきっかけに米国で流血の惨事が起こるシナリオが急速に現実味を増している。世論調査で大きく後れを取るトランプ大統領は、平和的な政権移譲を確約しようとせず、白人至上主義の民兵や過激派組織をあおり立て、郵便投票から新型コロナウイルスに至るまで、あらゆるデマをまき散らしている。大虐殺を長年研究してきた私が見るに、大統領選が有色人種を狙った虐殺行為に発展する危険性は一般に考えられている以上に高い。

なぜ、最悪の事態になりうるといえるのか。理由はいくつもある。まず政治、社会、経済が不安定化していることだ。こうした状況は、学術理論では民族浄化などの蛮行につながる代表的なリスク要因と位置づけられている。

国連が採用する分析枠組みに照らしても、米国は次々とチェック項目に引っかかる。手のつけられなくなったパンデミックに経済の悪化、増加する失業に全土に広がる抗議デモ。自然災害は深刻化し、党派対立の過熱もとどまるところを知らない。こうした条件が2つか3つ重なるだけでも十分に危険な状況といえるのに、米国が抱える危険因子は五指に余る。