東京財団政策研究所上席研究員 早川英男(はやかわ・ひでお)1954年生まれ、愛知県出身。東京大学経済学部卒。米プリンストン大学経済学大学院にて修士号取得。77年日本銀行に入行後、長年にわたって主に経済調査に携わる。調査統計局長、名古屋支店長、理事などを歴任し、2020年4月から現職。著書に『金融政策の「誤解」』。(撮影:梅谷秀司)

新政権が誕生して1カ月余り、菅義偉首相は安倍晋三政権の政策継承を唱えるが、しだいに両者の肌合いの違いがはっきりしてきたと感じる。経済政策については、アベノミクスが結果を出せなかった成長戦略の強化が重要という点で識者の認識は一致するが、まさにこの成長戦略において両者の違いが最も鮮明になりそうだ。

安倍政権の成長戦略はよくいえばビジョン重視、悪くいえばスローガン倒れだった。1億総活躍、働き方改革、生産性革命、全世代型社会保障など、毎年のように新しい看板が掲げられた。これらはいずれも日本経済の弱点を突く正しいビジョンに基づくものだったが、残念ながら現実に成果が上がるまで目標が追求されることはなかった。

安倍政権の成長戦略が中途半端に終わった理由については諸説あるが、1つには安倍氏を取り巻くリフレ派学者たちが「デフレ脱却さえ実現すれば、すべてうまくいく」と構造改革を重視しなかったことがあるだろう。また安倍氏には、安全保障法制や憲法改正といった自身が重視する目的の実現のためには、既得権益を敵に回すのは得策でないとの判断があったのではないか。いずれにしても、スローガンが実効性のある具体策にまで絞り込まれなかった印象が強い。