右派の扇動政治家が世界のあちこちで民主主義と法の支配を骨抜きにしている。しかし20世紀の独裁者と違って、現代の強権政治家は自らが破壊している制度の外見だけは維持しようと努めているため、野党は苦しいジレンマに立たされている。野党は自らに不利となるように仕組まれたルールにおとなしく従うべきなのだろうか。それとも批判覚悟でルールに逆らうべきなのだろうか。

ルール破りは民主主義の崩壊に拍車をかけると考えるのが普通だろう。だが、憲法上許されるギリギリの強硬手段に出ることが適切な場面もある。強権政治家が法を悪用して民主主義の精神に背くなら、野党は民主主義の精神に従ってそうした法に対決を挑まなくてはならない。根本の政治原理が危機にさらされているときには、野党は一丸となって「これは通常の政争ではない」という強いメッセージを国民に発するべきだ。

米国では共和党が医療保険制度改革法(オバマケア)の撤廃を狙っている。これは冷酷であるのと同時に支離滅裂な企てではあるが、仮に共和党のもくろみが成功したとしても、それで米国の民主主義が終わるわけではない。だが、議会によるチェックを公然と無視するトランプ政権の破廉恥な振る舞いとなると次元が違う。これは政治哲学者ジョン・ロールズの言う「憲法の必須事項」に対する攻撃であり、「通常の政争」で片付けられる問題ではない。