ペイパルの創業者、ピーター・ティール(左)とマスク。2000年、マスクはティールにCEO職を剥奪される(AP/アフロ)

2008年、37歳のイーロン・マスクは人生のどん底にあった。CEOを務める2つの会社がどちらも倒産の危機に瀕していたからだ。

テスラは、待望の初のEV「ロードスター」の発売に向けて苦戦していた。宇宙ベンチャーのスペースXは、3回の打ち上げに失敗し、まだ何も名を上げていなかった。悪いことは重なり、大学時代から付き合っていた最初の妻とも破局した。

それから1年も経たないうちに状況は一変する。スポーツカーのロードスターは、造れば売れた。スペースXは打ち上げに成功し、16億ドル(約1700億円)でNASAと契約を結んだ。両社は、自動車と宇宙という2つの重要な産業に革命を起こし、世界を変える可能性を秘めていた。さらにマスクは再婚した。

ジェットコースター並みに激しい人生の起伏は、マスクの半生を語るうえでもはや「定番」といえる。彼が運勢の変わりやすい人だからではない。子どもの頃の経験に起因する内面の複雑さと、自己矛盾、そして常軌を逸した壮大な野望によるものなのだ。

そして現在のマスクは、EV生産が軌道に乗り、ロケットの有人飛行を成功させた。ツイッターでは約3900万人のフォロワーを持ち、資産の額は890億ドル(約9兆3000億円)と最も裕福な人々の一人にまで上り詰めている。

これほどの有名人にもかかわらず、わからないことがある。「イーロン・マスクとは、いったい何者なのか」ということだ。

異常な集中力