20世紀前半に起きた2つの大戦の戦間期を経験した世代から見れば、世界が現在直面している危機などものの数ではない。彼らはもっと悲惨な光景を目の当たりにしてきた。血で血を洗う世界大戦、世界恐慌による大失業と極貧状態、ファシズムの脅威──。

だが、問題解決という意味では現代のほうがはるかに厄介な状況にあるのかもしれない。というのは、現代の問題に対処するには国際的な取り組みが欠かせないが、肝心の国際協調がまったく十分ではないからだ。なるほど、グローバル化は20世紀初頭にも格差を拡大させ、経済を不安定化させた。米国発の世界恐慌も国際市場を経由して各国をのみ込んだ。それでも戦間期の問題は、基本的には各国の内政問題といえた。

当時の政策担当者は、不安定化したマクロ経済、行きすぎた市場原理主義、広まる格差が問題の根っこにあることを理解していた。戦後にかけて、社会民主主義に基づく福祉国家づくりが進められたのはこのためだ。マクロ経済管理、累進課税と再分配、最低賃金法、労働安全基準、公的医療保険、退職手当、弱者に対する社会的なセーフティーネットは今では当たり前になっている。こうした近代福祉国家のビジョンは欧州で生まれ、欧州全域で共有されたが、具体的な政策は各国がそれぞれの権限で推進すれば、それで事足りた。