建設業界では民間工事をめぐる受注競争が激しくなっている(記者撮影、写真と本文は直接関係ありません)

「予算がねえんだよ」

新型コロナウイルスが猛威を振るった今春以降、多くの下請け業者はゼネコン社員からこのように工事代金の値下げを迫られる場面が増えた。

「値下げ圧力は常にあるが、コロナ禍で一層厳しくなった。仕事のためには『うちはその金額で受けます』と、ゼネコンの言いなりにならざるをえない事業者があることは確か」。都内で鉄筋会社を経営する社長はこう吐露する。

46万社がひしめく業界

全国に約46万社もの業者がひしめくゼネコン・建設業界は、4~5層もの重層下請け構造になっている。スーパーゼネコン5社を頂点に、全国展開する大手ゼネコンおよそ50社や中小規模の地方ゼネコン約2万社が連なる。

下請けとして内装や電気などを手掛ける専門工事業者があり、さらにその下請けとして実際の設備工事を施工する協力業者がいる。零細規模の事業者が各都道府県に散らばっている。

このように広く散在する建設業者が、約60兆円という公共工事や民間工事の国内建設需要を食い合っている。全体のパイ(工事需要)が減れば、限られたパイをめぐって受注競争が激しくなる。利益を確保するためにゼネコンは下請け業者への工事代金の値下げ姿勢を強める。

「仕事がない」「工事を取りに行かなきゃ」「安くても取らなきゃ」。下請け業者の間には最近になって、工事需要の減少とともにこういった焦りの動きが顕在化しているという。

建設業者は、費用に占める労務費の割合が約7割と言われている。工事代金が低下すると、利益を確保するためには労務費を下げることになる。もともと若者離れが深刻な業界だ。そうした動きが加速すると、働き手がますますいなくなってしまう事態も危惧される。

「このままだと建設業が崩壊する。ここ数年は何とか仕事が増えていた。いま再び仕事が減っているからといって、足元の売り上げを確保するために工事代金を下げることは昔に戻ってしまうことになる」と前出の鉄筋会社社長は警鐘を鳴らす。

歯車が逆回転した