まとば・あきひろ 1952年生まれ。慶応大学大学院経済学研究科博士課程修了。専攻は社会史、社会思想史、マルクス学。『超訳「資本論」』『マルクスに誘われて』『カール・マルクス入門』など著書多数、訳書に『新訳 哲学の貧困』『新訳 初期マルクス』など。(撮影:尾形文繁)
未来のプルードン——資本主義もマルクス主義も超えて
未来のプルードン——資本主義もマルクス主義も超えて(的場昭弘 著/亜紀書房/2200円+税/240ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
19世紀中葉のフランスで社会主義思想家・活動家として活躍したピエール=ジョセフ・プルードン。彼の思想を、同時代を生きたカール・マルクスは徹底して批判した。だが、「マルクスに足りないものがプルードンにある」と、日本を代表するマルクス研究者がその思想を現在に問う。

ポスト資本主義で生きる、反国家・反権力思想

──ある意味、2人は同志でした。

19世紀に資本主義がもたらした民衆を従属させる社会に抗議して立ち上がったのは、マルクスら社会主義者、共産主義者という人たちです。当時の資本主義の下、生産性を上げた企業が経済活動から莫大な利潤を手にした一方で、その恩恵にあずかれない貧しい人々も多く生み出されました。

プルードンとマルクスは、資本主義の持つ不平等と人民を抑圧する権威主義をどう乗り越えるかという共通のゴールを目指していたのですが、その道筋で違いが生じ、マルクスがプルードンを批判するようになったのです。

──マルクスによるプルードン批判のポイントは?

1840年にプルードンが『所有とは何か』で行った「所有、それは盗みである」との主張に、マルクスは彼の共産主義への着想を得るほど共感しました。ところが、46年の『貧困の哲学』で、プルードンが「社会の矛盾は不安定な経済の不均衡にあり、それを正すことで矛盾はなくなる」と主張し、所有批判から転換したと考えたマルクスが反発、そこからプルードン批判が続けられました。

プルードンはこの後、反権力・反権威という姿勢を強めてアソシアシオン(アソシエーション、共同体)や人民銀行、無償信用(利子を取らないで貸与される貨幣)、相互主義、持ち株会社といった、現在でも通用するユニークな議論を展開していきます。一方のマルクスは『共産党宣言』や『資本論』を執筆するようになりますが、その中でプルードンの論考について批判しながら、自らの共産主義の論理を固めていくのです。