週刊東洋経済 2020年10/3号
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新型コロナウイルスの世界的流行で多くの業界が打撃を受けているが、とくにダメージが大きいのが航空、鉄道業界だ。

航空業界では2020年1〜3月から各国間の入国制限により国際線に影響が出ていたが、国内線も4月の緊急事態宣言を受けた外出自粛により利用客が消えた。

20年度第1四半期の売上高は、国内最大手の全日本空輸やLCC(格安航空)のピーチ・アビエーションを傘下に持つANAホールディングス、日本航空(JAL)ともに7割減と沈んだ。とくにJALは、今年度からIFRS(国際会計基準)に移行しているため単純比較はできないが、第1四半期当期純利益の赤字額937億円は、経営破綻の直前だった09年度第1四半期の当期純利益990億円の赤字に匹敵する。

2社の純資産を赤字額で割ると、ANAは2.4年、JALは3.0年で食い潰すことになる。ANAの福澤一郎常務は「(第三者からの)出資については慎重に見極めていきたい」としたうえで、「もし下期以降に(資本増強を)行うとすれば、(形態は)劣後ローンなどになるかもしれない」と話す。

実際、すでに複数の大手エアラインが経営破綻した海外勢と比べると、ANAとJALの財務体質は相対的にしっかりしている。とはいえ、業界団体のIATA(国際航空運送協会)は、世界の航空需要が新型コロナの感染拡大前の水準に回復する時期を24年としており、先行きは見通せない。

海外では採算が悪化した国際線を持つ大手航空会社に対して、国が資金支援するケースも出てきた。逆に、国の支援を取り付けられず経営破綻した会社もあり、国が命運を握っている状況だ。

では、ANA・JALにも公的資金が投入されるのか。ある国土交通省OBは「今のまま需要が低迷すれば、1年後には何らかの交換条件付きで交渉がなされるのではないか」と推察する。

鉄道業界はどうか。JR本州3社の20年度第1四半期決算は、JR東日本とJR西日本の売上高が半減、JR東海の売上高は7割減だった。JR東海は東海道新幹線が収益柱という一本足経営。航空同様、長距離移動の低迷が直撃した。JR東日本とJR西日本は新幹線のほかに通勤など近距離需要もあるため、JR東海に比べて売り上げの落ち込み幅は小さかった。

鉄道事業は航空以上に費用に占める固定費の比率が高い。航空業界は減便や機材の小型化を臨機応変に行うことで燃料費を節約しているが、JR3社は航空に比べると運休の程度が小さいうえ、運行に必要な燃料費(電気代など)が飛行機ほどかからないからだが、1編成の車両数を16両から10両に減らすといったことはしていない。「編成を変える手間を惜しんでいる。自分たちの都合にすぎない」(えちごトキめき鉄道の鳥塚亮社長)との指摘もある。費用が減らないため、売り上げの減少が利益の減少にほぼ直結する。

9月16日、JR東日本とJR西日本はそれまで未定としていた20年度業績予想を発表した。下期に少し持ち直すという想定で第1四半期ほど悲惨ではないが、それでも当期純利益はJR東日本が4180億円の赤字、JR西日本は2400億円の赤字。仮に来年度以降もこのペースで赤字が続くとしたら、JR東日本は7.6年、JR西日本は5.1年で純資産を食い潰すことになる。

JR東海は、「新型コロナの影響を見通せない」として、17日時点で20年度の業績予想は未定のままだ。第1四半期の赤字額を基に計算すると、13.3年で純資産を食い潰すことになる。他社よりも余裕があるように見えるが、問題は現在工事が進行中のリニア中央新幹線だ。品川─名古屋間の事業費5.5兆円のうち、財政投融資で3兆円を調達済みだが、残る2.5兆円は自己資金と金融機関からの資金調達に頼ることになる。それを考慮すると財務体質は今よりも悪くなる。大手私鉄各社も新型コロナで打撃を受けているものの、通勤などの短距離移動が主体であり、JRと比べ影響は小さそうだ。

2020年7月から運行が始まったJR東海のN700S(左)。大黒柱の新幹線にコロナ禍が襲いかかった。国際線の拡大に邁進してきたANAは大規模なリストラが避けられない(撮影:村上悠太)

航空・鉄道の大再編も