8月28日の安倍晋三首相の辞意表明会見に関しては、同日の「産経ニュース」が正確な記録を報じた。これはオシント(公開情報諜報)の貴重な資料になる。この資料から安倍政権の遺産について分析してみたい。安倍氏の発言を具体的に見てみよう。

〈この7年8カ月さまざまな課題にチャレンジしてまいりました。残された課題も残念ながら多々ありますが、同時にさまざまな課題に挑戦する中で達成できたこと、実現できたこともあります。全ては国政選挙のたびに力強い信任を与えてくださった、背中を押していただいた国民の皆さまのおかげであります。本当にありがとうございました。

そうしたご支援をいただいたにもかかわらず、任期をあと1年、まだ1年を残し、他のさまざまな政策が実現途上にある中、コロナ禍の中、職を辞することとなったことについて、国民の皆さまに心より、心よりおわびを申し上げます。拉致問題をこの手で解決できなかったことは痛恨の極みであります。ロシアとの平和条約、また憲法改正、志半ばで職を去ることは断腸の思いであります。〉

安倍氏は「痛恨の極み」という表現を使って、志半ばの課題として3つを挙げた。北朝鮮による拉致問題、ロシアとの平和条約締結(北方領土問題の解決)、憲法改正だ。これら3つが、次の首相になることが確実視されている菅義偉官房長官に継承される遺産になる。この意思を安倍氏は以下の表現で明示している。

〈まあしかし、いずれも自民党として国民の皆さまにお約束をした政策であり、新たな強力な体制の下、さらなる政策、推進力を得て実現に向けて進んでいくものと確信しております。もとより、次の総理が任命されるまでの間、最後までしっかりとその責任を果たしてまいります。そして、治療によって何とか体調を万全とし、新体制を1議員として、支えて参りたいと考えております。国民の皆さま、8年近くにわたりまして本当にありがとうございました。〉