ドキュメント 感染症利権 医療を蝕む闇の構造(山岡淳一郎 著/ちくま新書/840円+税/252ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
[Profile] やまおか・じゅんいちろう 1959年愛媛県生まれ。ノンフィクション作家。「人と時代」「21世紀の公と私」を共通テーマに、近現代史・政治・医療・建築など分野を超えて執筆。『原発と権力』、『国民皆保険が危ない』、『田中角栄の資源戦争』など著書多数。

「先が見えない時代には歴史を振り返れ」と、よく聞く。人間の本質は今も昔もそれほど変わらないからだろう。陳腐な言葉だが、歴史は繰り返す。

新型コロナウイルスを巡っては科学と政治・経済の対立が浮き彫りになった。感染拡大を徹底して抑えるべきか、経済を優先すべきか。コロナ対策と経済優先は二項対立なのか。議論は混迷した。

こうした中で、「今の政治が悪いんだ」と声高に叫ぶ人もいたが、足下の状況を、現在の政権や医学者の問題と簡単に切り捨てられないことは本書を読むとわかる。感染症の歴史は利権を巡る対立の歴史である。そして、感染症対策の意思決定は今も、長い時を重ねて固定化された構図の中で行われている。

PCR検査を受けられない。新型コロナが日本を襲いはじめた頃、こうした悲鳴がSNS上に広がった。むやみに検査数を増やすと保健所がパンクするというのが理由だった。国が対応できないならばと、いくつかの大学がPCR検査を実施する用意があることを表明したが、黙殺された。