ファンケル 創業者 池森賢二 プロローグ|オーナー経営者の決断 1

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大切に育てた会社を手放したくない──。オーナー経営者ならばそう考え、事業承継をためらうのも無理はない。しかし、業績が悪化する前に決断したほうがいい。そこでまずは、社長の座はもちろん、株式もすべて手放し事業承継をした2人のオーナー経営者の話に耳を傾けてみよう。 =敬称略=

「自分のことより会社や社員を最優先に考える」

1981年に無添加化粧品の会社を起こし、今や日本を代表する化粧品メーカーに育てた池森賢二。2019年8月にキリンホールディングスと資本業務提携、創業家の全株式を譲渡する形で事業承継をした。池森よわい82のときだった。

──いつから株式の譲渡による事業承継を考えていたのでしょう。

ファンケル 創業者 池森賢二(いけもり・けんじ)1937年生まれ。三重県出身。59年小田原瓦斯入社。81年にファンケル創業。2003年に社長を退任し名誉会長に。13年会長執行役員として経営に復帰、20年に退任。現在は名誉相談役 ファウンダー。

ちょうど80歳になってすぐのときです。日本人男性の平均寿命が81歳くらいだと聞き、「私が突然死んだらファンケルはどうなるんだろう。支え続けてくれている社員や役員が困ってしまう」と思い、真剣に考え始めました。会社も好調でしたし、私の目が黒いうちに、会社の将来を考えなければならないと思ったのです。

──親族に会社を継がせるという選択肢を採らなかったのはなぜでしょうか。

私には息子と兄弟がいます。しかし息子は美術の道を志していましたし、兄弟も高齢ですから引き継げる人材が身内にはいませんでした。だから親族に継がせようという考えは初めからありませんでした。たぶん継がされたほうも迷惑するだろうと思ったからです。

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